土地総合研究所(The Land Institute Of Japan : LIJ)
イギリスとアメリカでは、間違いなく、サステナビリティの問題は、まさに不動産投資の意思決定が行われる背景を変えつつあるということがいえると思います。
さて、本日、私からは、PRUPIMという私が勤めている会社のお話を少ししたいと思います。しかし、CO2削減のための問題やその解決にとって、不動産というものが重要なキーになっているということをお話ししたいと思います。今、パイボ先生からはこういう問題が提起されました。責任ある不動産投資は、運用業績が果たしてすぐれているのか。もしそうでないとしたら、小さいコスト、あるいはゼロコストで投資することによって、運用業績はそのままでも、環境に配慮した投資ができるだろうか。それを考えて みたいと思います。そして、責任ある不動産投資にはさまざまなアプローチがありますが、それらを私は比較してみたいと思います。もちろん、どれも価値があるいいものでありますが、相対的にどれがすぐれているかと私が考えるかをお話ししたいと思います。
さて、PRUPIMというのは、アメリカのプルデンシャルとは違いまして、英国で設立されたプルーデンシャル、PLCの間接子会社であります。イギリスのプルーデンシャル系の会社でありまして、アメリカのプルデンシャルとは関係ありません。多国籍の企業でありまして、世界中で 150億ポンドを超える不動産を管理しています。それをまず冒頭に念のため申し上げたいと思います。
気候変動の原因は何なのでしょうか。国連のデータによりますと、出典はUNEPのSBCIでありますけれども、どうやら問題の原因は不動産つまり建築物の環境にあるということがわかります。エネルギー利用でいえば40%、そして CO2の排出でも40%を占めています。昨日、日本のケースだと3分の1の排出量を占めているということを伺いました。それにしても、一般的なお話としてはそれくらいの割合を占めているわけです。 CO2の排出の40%、この約半数が住宅、残る半分が商業用の建築物です。このように CO2排出の大きな原因になっていることは明白です。
次のスライドはごちゃごちゃしていてわかりにくいかもしれませんね。出典はIPCCです。この図を使って私が皆様にご説明したかったのは、CO2の排出量は、先進国、途上国のいかんを問わず、建築物に対応していくことが排出量削減に大きく貢献できるということです。しかも、ほとんどコストなしで行えるということです。そういう意味では、不動産は解決の大きなパーツになり得るわけです。
次のスライドで、中心に書かれている不動産の投資家がすべての中心になるということを示唆したかったのですが、それを取り巻く関係者としては、政府関係者、環境問題の活動家などがおります。イギリスではラインダンスのように、お互いにそれぞれをチェッ� �しながら、関係者の間できちんと仕事をしているかどうか、サステナビリティという観点からチェックしています。テナントにもいろいろなことを聞き取りしています。それから供給側、サプライヤーと書いてありますが、我々の考えることとサプライヤーとの理念に共通点があるのかどうかすり合わせています。ただし、投資家、ここが中心にあることをぜひお忘れなくいただきたいと思います。
次のスライドでは双子のパラドックスがあるということについて、このように表現しました。第1のパラドックスは、議論されている内容の98%が、問題のわずか2%にすぎないということです。不動産業界では、この問題は建築の技術的な側面だけであるという見解がありますが、そんなことはありません。もし我々の注目がグリー� �な開発であれば、不動産のサイクルを通して、一体どれくらい毎年新しいストックが増えているのか考えてみると、わずか2%です。ですから、ここの部分にしか注意をしなければ、問題の解決のペースは非常に遅々としたものになるでしょう。いろいろな文献が書かれています。しかし、ほとんどはその2%の部分について、つまり新築の部分についてしか触れていないのが実態です。
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そして、ノウハウといえば2つ目のパラドックスにつながります。知識のある者には力がなく、力のある者には知識がないという逆説です。技術的な人たち、エンジニア、建築家、プロジェクトマネジャーのような方々がディベートの中心になって、責任ある不動産投資とは何かを考えています。しかし、その議論はファンドマネジャーが理解できるような、また行動をとることにつながるような言葉で語られていません。パイボ先生やほかの講演者が今日試みようとしているのは、我々の説明する言葉を皆さんに理解できるように変えていくことであります。既存建築物のストックについて注目をしながらです。
さて、3つの可能性をここに挙げました。左からご説明したいと思います。責任ある行動をとり、それによって不動産ファンドの業績が向上すれば、当然、受託者責任を遂行していることになります。これは信じることができるかどうか、その論理は何か。真ん中をご覧ください。責任ある行動をとる、その結果、ファンドの業績に影響なし、だとすれば、このような行動は道義的な義務となります。特に何もダメージは受けません。この理論を逆さにして、ファンド業績に影響しないことを行うことはできるでしょうか。受託者責任も満たしながら、真ん中のところを実現することはできるだろうか。さて、最後の可能性、恐らく投資家の皆さんは、一番右に書いてあるところの考え方がまだ一般的ではないでしょうか。ファンド� �績が悪化するとなると、受託者責任と道義的な責任の板挟みに苦しみます。
そこで、何とかロジックを右から左側に変えていくことはできないものかと私は考えてまいりました。ファンド業績もよくなる、責任ある行動もとることができる、ここまでいかなくても、真ん中のところでできることはかなりいろいろあると思っています。
では次に、このようなロジックは成立するのかどうかを考えてみたいと思います。今日の皆さんは非常に経験がおありの方々ですので、このようなスライドは毎日考えていらっしゃることですから、簡単に済ませたいと思います。投資をしたお金で一体何が得られるのか。投資ですから、まず資本の投下に対するリターンです。ベースラインとしては、最低でもリスクフリーの国債が考えら� ��るでしょう。それがインフレ調整のものであり、政府保証がついているものであればなおさらいいでしょう。それよりも低いリターンをあえて求める理由はない。そういうのが一般的な考え方でしょう。
次に2点目は、不動産に投資することによってリターンを得る確実性です。リスクが高くなれば、リスクプレミアムが上昇し、価格は低下します。
3点目、時間経過とともに投資収益はどのように変化するか。経済が拡大すれば、レントも高くなるでしょう。しかし、それぞれ個別の物件は老朽化すれば価値が劣化していきます。これは機能面でも、物理面でも劣化していくでしょう。こういったこと、つまりこの3点に影響を与える項目は、いずれも資産価値と資産業績に影響を及ぼします。
予期せぬ政府規制� �リスクがありますが、それはともかくとして、例えば最低基準を政府が規制として決定する。その場合、基準を満たすために既存のビルの改修が必要になります。そういう意味では、そのリスクに対してグリーンビルの方がより免疫があるといえます。欧米は、テナントが企業市民としての責任から、グリーンな建物に入っている姿勢を示したいというところが増えてきています。たとえグリーンな建物の方がそうでない建物よりも賃貸料が高いとしてもです。グリーン投資の協会は、グリーンであればそのまま価値が高いといって間違った認識を示しているところもありますが、そうではありません。グリーンであることによって価値が守られるというのが、より正確な考え方です。
さて2点目、効率的なグリーンな建物は、電� �料金などの維持費が安く、その分賃貸料も高く設定できます。そうなると当然、テナントは高くお金を払わなくてはなりません。
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次に流動性です。大体こういった物件というのは流動性が低いといわれていますが、グリーンビルディングを好む傾向があれば、取引が短期間でできますので、グリーンでない物件よりも流動性が高く、機会費用が低くなります。そして、リスクプレミアムという意味で、グリーンであるかグリーンでないかによって差が生まれてきます。時間の経過とともに、グリーン資産の場合はキャップレートが低くなるでしょう。なぜならば、減価償却が低く、リスクプレミアムが低いという考え方を適用することができるからです。これからの10年というスパンで考えてみると、グリーンビルはそうでないものよりもパフォーマンスがよくなるでしょ� ��。実際、そういった証拠があります。
パイボ先生が先ほどご自身の研究について発表されました。こちらは2人のオランダ人、そして1人のアメリカ人の研究者が共同で行った統計的な経済計測手法を用いた研究の結果です。1万件の不動産のサンプルを調査しました。もちろん物件によって差があります。そこで、標準化をする際に、エネルギー効率の部分だけを調整しました。エネルギー効率の高いビル以外かどうか、それ以外のところはすべてイコールにしました。その補正を行った結果、単位面積当たりの賃貸料が3%高くなってきています。そして、6%高い収入が得られます。キャップレートが低いために売買価格においてはグリーンであることがプラス16%の影響をもたらしています。これは総計を示したものであ� �て、実際の物件のコストについてはここでは対象としていませんのでわかりません。しかし、こういった研究結果をみてみれば、明らかにグリーンビルがそうでないビルのパフォーマンスを上回るということが明らかだと思います。
サステナビリティは中期的に資産価値の向上に、そして相対的なパフォーマンスに影響を与えるはずです。今はまだ価値に反映されていませんが、イギリス、北米では、5年や10年という期間でみた場合、必ず価格にも反映されるだろうという期待があります。その間に、価値とパフォーマンスは違ったものになっていくはずです。その重要性が増せば増すほど、価値への影響も大きくなり、更に重要性が増すことになると思います。
それが分かりながら、投資家は無責任でいられるでしょう� �。私はそうは思いません。我々はこれまでも、知性ある投資を主張してきましたし、これからもそうです。誰しもポートフォリオをグリーンに偏らせることも、グリーン以外に偏らせることもできる。それによって、パフォーマンスを上げることができることも分かっています。しかし、CO2を軽減するための積極的な行動という点でいえば、ほとんど何もしていない。せいぜい間接的に何かしているくらいでしょう。責任ある投資家とは、不動産ワーキンググループの一員として言うなら、更なる行動に関連したものではないでしょうか。
先ほどみました真ん中の部分、低コストで、採算性のある措置というものができないのか。先ほどの真ん中のところの可能性を追求できないのかと考えています。プルーデンシャルの中で� �験を試みました。その中では5億ポンド相当の我々の不動産物件、非常に典型的な物件で、さまざまな典型的なポートフォリオ、ミックスのポートフォリオを取り上げ、不動産管理というものでコストをかけながら、コスト内で環境への負担を抑えることができないということを考えました。
2種類のベンチマークを適用しました。こうした不動産物件というものは、IPDの指数、インデックスに匹敵するような収益が達成できるばかりではなく、最初から、改装直後から環境へのフットプリントが抑えられ、その後何年も抑えられたというものでした。
たくさんの教訓を学びました。もちろん決定的で明らかな成功例ばかりではなかったのですけれども、このような試みをしました。このスライドについては詳細に述べ� ��せんけれども、それぞれの土地の利用に関して、このような表を作成してやっています。そこでは低コスト、高い大きな影響の措置をとることができないのかということで分けたものがあります。大半のものは、マネジメントシステムを実行して、その中で、例えばエネルギーですとか水、廃棄物などの管理の中で、何か標準外のような状況がみられないかということを検証するというようなやり方です。
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改装の例をこれからご覧に入れたいと思います。警告しておきますけれども、写真をおみせしますが、これは新築の物件ではないのです。どちらかというと古い、本当にくたびれたような、サウサンプトンにある物件です。これはイングランドの南部にある町なのですが、築30年、質的には中程度、複数の賃貸に対応できるような工業用の物件です。改装時には4つのユニットが改装されました。工業団地にあるのですが、できるだけ改装後には一番いい賃料で、賃貸借期間は一番長く、質の高いテナントを集めたいと思っていました。
イギリスでは、エネルギー性能証明書制度というものがあります。エネルギー効率に� �づいてランク付けされます。このプロセスは、不動産物件、リース物件に関して拡大されつつあります。当初、この物件のランクはEでした。多分イギリスの平均はDとかEだったと思うのですけれども、こちらの物件に関してはEでした。近隣のもので一番いい比較対象になりそうなものというのはDでした。ということで、少なくともBやCになるように目指しました。我々、環境的な資質としてこれを売り込みに活かしたいと思いました。基本的なアセットマネジメントをしたという部分もあります。それによって、この物件の再ポジショニングを行おうとしたわけです。
主要な部分というのは、天窓から自然な明かりをとるというものです。また、塗装も屋内はもう少し明るいものにして、反射効果を出そうとしました。� �た、質の高いテナントが集まりました。日本の会社である玩具メーカーのトミーが入ってくださることになったのです。トミーは、企業としての社会的責任ということで、イギリスにおいて入居する場合にはC以上のものということで目指していらっしゃったということがありました。この物件は、競合する物件よりもそういう面で有利だったと思います。それに、日中、余分に照明器具を使わなくてもいいということも気に入ってくださいました。全体の入居コストが低減したということです。実際に運営維持についても、倉庫で人数が少なく済むということでした。
こうした数字ですけれども、これは架空のものが多いです。このような改装を我々が実際にした形ではしなかったということで企画しているわけですので。黄色� �いうのは左側ですけれども、我々が実際した改装と違った場合、普通の改装を行った場合です。右のものは実際に改良型のものを行ったというわけですけれども、注意していただきたいのは、賃料はやや上がったということ、キャップレートは少し下がっていったということです。経時的には価値が高まるというものです。
そして工事が行われたのですけれども、タイミング的にイギリスの市場が非常に下降局面にあるときに工事が行われました。そのため、もしこの10年間のリースではなく、3年ごとに巻きかえるような契約で、このような改装をしなかったら、IRRというのはよくなかったでしょう。長期的なものでIRRができ、実際にはこのような工事を手がけることによって、収益的にもよくなりました。非常に画� �的な成功例というわけではないのですが、このような形で我々がとった措置を擁護することができるようなたぐいのものではあると思います。
さて、どのようにこれからこの考えを進めていくのか、また、何らかの環境的に責任のある投資ファンドになっていくのかということについての考え方ですけれども、より広い責任では、社会的に責任ある投資というものでは、たくさんのエクイティファンドがあります。債券ファンドもありますし、パイボさんから紹介がありましたように、幾つか不動産関係のファンドもあると思います。2つの主要なアプローチがあります。社会的に責任ある投資の形態のうちの1つですけれども、1つはスクリーニング、選別と呼ばれるものです。スクリーニングというのは、肯定的なポジティブ� �もの、もう1つはネガティブなもの。また、ファンドの形態を、性質的に自分たちのファンドの哲学に合っているということで、プラスで分けるのか、それとも自分たちの哲学とは全く反対だというものでマイナスで排除するのかという分け方です。
2番目の種類というのはエンゲージメント、関与というものです。関与ということで、いろいろなことに投資ができます。しかし、投資をするということですと、相手先の会社と話をするということです。会社のビジネスのやり方、慣行ということでやりとりをして、社会的に責任のあるような形でやってもらうということです。スクリーニングというのは、不動産物件に関しては非常に難しいと思います。例を述べますと、エンゲージメントというのは、エクイティよりもいろいろな形態が考えられます。ビルでもありますし、またテナントとも関与できますし、法的な構造ということで、リースという関係で責任を進めていくという形態も考えられますので、いろいろな豊富な形態があ� ��えます。
その中で3つのグリーンな環境配慮型投資ファンドの形が考えられます。まず最初に、パイボ先生も先ほど述べられたと思いますけれども、グリーンな開発ファンドです。これは新規の環境配慮型の不動産を開発するというものです。もちろん開発ということになりますと、さまざまな環境に配慮した形でやってほしいとアドバイスするでしょう。しかし、こうした問題を不動産業界に引き継いでやっていくということになります。経済的な視点からは見慣れないようなやり方です。開発で、そのサイクルの初めではうまくいっても、終わりのほうではなかなかうまくいかないということで、ストップスタートということで、開発の段階によって違ってくると思います。
もう1つ、環境で相入れないのは、もしその ビルを解体してグリーンなビルに建て替えるという場合、解体工事の中ではたくさんのエネルギーが使われます。新しいビルを建てるわけですけれども、新しいビルも環境インパクトを吸収する資本の回収期間がかなり長くかかるでしょう。しかし、これは大変なものですが、価値のある考え方ではあると言えます。
第2の形態ですけれども、スクリーニングであります。選別ということで、ダーク・グリーン・ファンドというものです。これはグリーンなビルだけに、そしてグリーンなテナントがいるところだけに投資するということが話題として上っていますが、投資家としての問題というのはイギリスでは当てはまりますし、北米でも当てはまります。日本でもいえるかと思います。投資可能な範囲というのが非常に小さい範 囲にとどまっているということです。その意味でリスクがあります。独自のリスクです。しかし、環境的な視点からすると、考え方として少しおかしいものがあります。こうしたテナント、こうしたビルというのは、既に環境に配慮しているグリーンな人たちです。繰り返しになりますけれども、CO2の低減にそれ以上どう貢献できるのでしょうか。貢献できる部分は非常に小さいと思います。
PRUPIMでの我々の見方としては、これからはエンゲージメント、関与中心ということです。それによってファンドマネジャー、我々の通常の資産アロケーションのプロセス、市場で資産を通常どおり買うのですけれども、我々が導いていくということが入ります。それによって、その対象の環境フットプリントを改善していくとい うものです。もしその中で、先ほど申し上げたものが当てはまるとしたら、これは将来、ビルをよくするということです。市場環境に配慮して、さらにパフォーマンスをちょっとだけ高めるということです。環境視点からいっても、これはやはり妥当だと思います。初日からこうした問題、CO2の低減に対応できるということで、リスクとしては一番小さく、また、グリーンな不動産投資ファンドのインパクトとしては一番大きくなるだろうからです。
結論です。不動産というものは、問題の解決という面で、また、CO2の排出増加という面で、やはり非常に大きな要素です。資源をたくさん使いますし、CO2の排出につながっていくパイプ的な存在でもあります。しかしまた、問題に関して投下資本当たりのコストとしては一番低いわけです。社会的な、政策的な状況というものは迅速に変わっているのが普通です。不動産ファンドマネジャーというのは、こうした変化を理解していく必要があります。受託者責任としては、こうした問題を少なくとも理解して、価値に対するインパクトを最小限に抑えていく、その影響は何かを考えていかなければいけません。そして、影響というのはまだ資産の価格セットの中には完全に理解され� ��いない部分があります。知性の高い情報をもった投資家は、そうした知識から利益を得るでしょう。でも、責任のある投資家というのは、役立つことをして、特に98%を占める既存建築物のストックに対してよいことをするということによって、貢献することを目指します。
ご清聴ありがとうございました。
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