電子商取引の法的課題 - 知的財産に関する情報 - 米国
コラム:電子商取引の法的課題
シカゴ
1 現在の経済社会に与える影響
デジタル技術の進歩が特に知的財産権制度に大きな影響をもたらす2つの大きな特徴
(1)一つは、全く同一の複製物の製造コストが極めて小さくなったこと。
(2)もう一つの大きな変化は、いわゆるデジタルコンテンツを電子的ネットワークで配布する場合、配布コストが極端に低下するということ。
これはこれまでの流通の概念を根本的に変えるものである。これには知的財産権の問題や契約的問題だけではなく、税の問題や、流通の安全の問題等、多くの問題が出てくることが指摘されている。
2 電子商取引が法制度に与える影響
知的財産権の分野で最も議論されることは、こうした電子商取引の世界では、これまでの知的財産権の制度が根本的な変革を必要としているかどうかという点であろう。
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既に5年以上も前に、Barlowは、「知的(財産権)法は、不動産法が放送の周波数割り当てには適応できないと同じように、もはやデジタル表現を律すべく継ぎ接ぎしたり、改修したり拡張することはできなくなっている。(しかしここでの試みは、それに近い。)こうした全く新しい環境に資することができるよう、我々は全く新しい方法を開発する必要がある。」と述べ、現在の著作権制度の破綻を予言していた。
彼は、「人々の倫理上のそして相互の理解、さらに環境の改善の為、アイデアは全世界の人々の間に自由に飛び交うべきである。」とするトマス・ジェファーソンの言葉を引用し、著作権の主要な目的は思想の広範囲な頒布にあったことを指摘した上で、その目的の為に一定の排他的権利を与えていた著作権が既に役割を変えることになることを指摘しているのである。
同じようにNegroponteも、「著作権法は完全に時代後れとなっている。それはグーテンベルグが人工的に造ったものだ。それは受動的に作られたものだから、多分修正するよりは一度完全にぶち壊されなければならないだろう。」と述べ、著作権制度が根本的な変革を求められていることを指摘している。
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一方ShapiroとVarianは、経済的側面から電子商取引の環境を分析した上で、著作権法はhopelessly outdatedではないと主張している。デジタル技術が与えた2つの大きな変化、すなわちコピーが容易となること、流通が促進されること、は、権利者にとっても新たなビジネス機会を与えるから、制度が破綻することはないという指摘である。
デジタル技術の発展によって完全なコピーが簡単に作られることを懸念して、著作権法の保護を強化する必要があるという指摘がある。しかし、一方的な保護の強化が果たして今必要な解決かは疑問が多い。完全なコピーが作れると同時に、違法コピーに対する保護措置の技術も格段の進歩を遂げている。保護強化を通じて、実は利用が不便になることは権利者のビジネス機会をも奪うことになる。違法コピーの問題の多くは、実はエンフォースメントの問題であることが多い。違法行為が横行す るからエンフォースメントを強化することと、権利保護の強化とは区別して議論する必要がある。
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エンフォースメントの問題と異なり、著作権法が従前予想していなかったような問題も指摘されている。その例として、デジタル・ネットワーク機器の内部の記憶素子への情報の一時的蓄積が著作権法上の複製権を侵害するかどうかという問題がある。これはWIPOの条約交渉でも取り上げられたが、結論が出なかった問題である。最近になっても、キャッシングを明確に合法とするかどうかが争われているようである。
さらに、創作性の有無に係わらないデータベースの保護も最近の話題の一つである。電子商取引の世界の拡大により、これまで商品価値の少なかったknowledge自体が大きな価値を持つ、そしてそれは瞬間的に、ネットワークを通じてあらゆる場所に おいて利用可能となった結果でもある。問題は、例えば株価情報や、気象情報、プロ野球のゲーム速報が、単なる公知の情報を越えてどこまで財産的価値を持つべきか、また持つべきではないのではないか、という大変難しい問題である。
これ以外にも、権利者へのインセンティブと利用のバランスを考慮すべき例として、電子図書館、遠隔地教育、障害者の情報アクセスの問題等があげられる。
より大きな法的課題は、jurisdiction (裁判管轄や準拠法)に関するものである。電子商取引は今後ますます国際的に行われる可能性があるが、契約法にしても知的財産権法にしても、どの国の裁判所に提訴でき(choice of forum)、どの法律が適用されるか(choice of lawsやgoverning law)、また、どのような救済を得られるか(enforcement) ということが議論されなくてはならない。残念ながら、これらの問題は殆ど手つかずの状態である。
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