一般要求事項(アウトソース) (4.1項)/MS 実務の視点
規格は、トップマネジメントが必要として定めた品質方針、品質目標の達成に向けてすべての業務を人々が協働して行なう体系的で組織的な品質マネジメント活動の枠組みを、PDCA/プロセスアプローチ サイクルに準えて規定している。本項では、そのP/計画に相当する品質マネジメントシステムの計画活動に関係して、その実行の要件、及び、この結果の品質マネジメントシステムを変更する際の要件が規定されており、トップマネジメント自身がそれら要件が満たされるのを管理する必要が規定されている。
品質マネジメントシステムの計画とは、品質マネジメントの各業務の実行の手はずを整える活動であり、その結果は、簡単に言えば確立された手順と用意された資源である。これら手はずは、各業務の品質目標である狙いの業務結果を確実に出せるように定められていなければならず、同時に、この実行の手はずに則って間違いなく行なわれ、狙いの業務結果が間違いなく得られるようにする業務実行管理の手はずを含んでいなければならない。また、確立した品質マネジメントのいずれかの手はずを変更する場合は、変更による混乱によって不良品が顧客に引渡されることのないよう、変更管理を行なわなければならない。トップマネジメントは、品質目標の確立の管理(5.4.1項)に加えて、それら品質目標達成の手はずを整え、 また、変更する活動をも管理しなければならない。
2.背景 及び 関連事項
2-1. 品質マネジメントシステムの計画
(1) 品質マネジメントシステムの計画活動
@ 計画活動
『計画』の原文は"planning"である。日本語の「計画する」が、将来行なうことの方法や手順を企画することであるのに対し、英語の"plan(計画する)"は、方法や手順を企画するだけでなく、いつでも実行できるように準備をしておくことまでを含む。つまり、将来行なうことの用意万端、手はずを整えることである$28。TC176指針(6)では「(処置や企画された一連の事柄の処理の実行のために)前もって手はずを整える」ことと定義されている。
また、"planning"は英文法上の動名詞であるから、「計画活動」又は「計画すること」である$28。すなわち、JIS和訳『計画』は「計画活動」であり、「手はずを整える活動」のことである。
A 品質マネジメントシステムの計画活動
規格の品質マネジメントシステムは、品質マネジメントのための多くの業務が有機的に結びつけられた集まりである。『品質マネジメントシステムの計画』とは、品質マネジメントシステムを計画すること、又は、品質マネジメントシステムの計画活動の意味であり、品質マネジメントの各業務の実行のための手はずを整えることである。これは、品質マネジメントの各業務の実行の手順を確立することであり、手順で使用や適用が必要な要員、設備などの資源を用意することである。規格作成者のひとり(22b)は、顧客要求事項を満たし品質方針と品質目標を実現することができる品質マネジメントシステムとするために、必要な資源、組織構造、プロセス、活動、管理、責任と権限を決定することであると説明してい� �。
B 組織の経営管理体系との関係
規格の品質マネジメントは、事業の維持発展を顧客満足の向上を通じて図る組織の経営管理(マネジメント)側面である。実際の組織の経営管理は、顧客満足の追求だけでなく、利益、コスト、能率、安全、環境、法順守など様々な観点から行なわれている。品質マネジメントの業務も多くはこれら他の経営管理にも関係しているから、その業務結果は品質目標を満たすだけでなく、他の経営管理に係わる業務目標をも満たす必要がある。実務的には、品質マネジメントシステムの計画は、関係するすべての経営管理システムの計画にも対応する形で行なわれなければならない。そして、品質マネジメントシステムの計画活動により整えられる手はずには、当該業務が関係する他の経営管理のための手はずも含まれていなければな� �ない。すなわち、計画された手順や資源は、時には相互に矛盾する、組織のすべての経営管理の観点の必要を満たす、組織として最適なものとなっていることが必要である。
(2) 品質計画
『品質マネジメントシステムの計画』は94年版では用語として存在せず、これを標題とする条項もなかった。代わりに、『品質計画』を標題とする条項(4.2.3項)があり、00年版の『品質マネジメント システムの計画』と『製品実現の計画』の両計画活動の要件が混合して規定され、規格解釈に混乱を生んでいたとされる (27a) (22b)。この『品質計画』はISO8404(3.3)では、製品の品質目標を決める『製品計画』とマネジメント活動と製品実現活動の手はずを整える『管理計画及び実施計画』とを含むものとして定義されていたが、4.2.3項の規定はほぼ『製品実現の計画』が意図されたものとなっていた。
これについて規格執筆者のひとりは、94年版(4.2.3)の『品質計画』には品質マネジメントシステム そのものに関する高位の計画活動と品質マネジメントシステムの低位の要素の詳細な計画の活動とが合わせて規定されていたが、00年版では前者の重要性を強調するために、本項(5.4項)が設けられたと説明している。
しかし、00年版には『品質計画』の定義があるのに『品質マネジメントシステムの計画』の定義がなく、更に、ISO9004の同じ5.4.
あなたが破産を申し立てるべきかどうかを通知する方法2項の標題が『品質計画』である。この記述の混乱は、本項の姿が確立したのが規格作成の最終段階であったことが原因であると考えられる。すなわち、DIS版までは本項標題は『品質計画』であり、その定義に沿った品質計画一般に関する要件が規定されおり、標題も要件も00年版のようになったのは最終段階のFDIS版であった。しかし、この記述の混乱が、00年版の『品質マネジメントシステムの計画』の理解を混乱させる原因となっていることは否めない。
ところで『品質計画』の概念自体は、00年版も94年版と同じである。00年版では「品質目標を設定することと、それを満たすのに必要な事業プロセスと関連資源に焦点を合わせた品質マネジメントの一部」(131e)と定義されており、94年版の『品質計画』と同じく、業務の狙いの結果を決め、その達成のための手はずを整える活動を指す。規格で品質マネジメントに関連する狙いの業務結果をすべて『品質目標』と呼ぶのと同じく、その達成の手はずを整える活動は、その業務が何であれ、すべて『品質計画』と呼ぶのである。
規格の概念では『品質マネジメントシステムの計画』も『品質計画』である。すなわち、品質マネジメントシステムの品質目標とそれを展開した各プロセスの品質目標をどのように満たすか、そのために必要な手順を決め、資源を用意するという『品質計画』である。00年版ではこの他に、製品実現の計画(7.1項)、設計及び開発の計画(7.3.1項)、製品及びサービス提供の計画(7.5.1項)、監視、測定、分析及び改善のプロセスの計画(8.1項)、内部監査の計画(8.2.2項)という品質計画の規定がある。これらの『品質計画』で満たすべき品質目標は、それぞれ、顧客に引渡す製品の品質目標、設計開発する製品の品質目標、各種管理業務の狙いの業務結果、内部監査で判断が期待される事項である。
規格執筆者のひとりは製品実現の計画を「製品の品質計画」とはっきりと呼んでいる(21k)から、その他の計画も規格の概念では『品質計画』であるに違いない。また、「品質マネジメントシステムを計画するには、基礎的な製品実現プロセスを特定し、十分に詳細に知っていなければならない」と、『品質マネジメントシステムの計画』が製品実現の業務の手はずを整えることを含むことを述べている(21c)から、その他の計画もすべて『品質マネジメントシステムの計画』に含まれると考えられる。
しかし、『品質マネジメントシステムの計画』は、トップマネジメントが「品質マネジメントの枠組みを確立する」こと(22c)であり、その結果が「品質目標を満たす組織のプロセスの基礎を形成」する(27a)と説明され、製品実現の計画はこれとは異なる概念であり(21c)、「製品実現プロセスの詳細な業務実行を計画すること」である(22b)と説明されている。すなわち、品質マネジメントの業務の体制や枠組みを組み立て、確立することであり、規格の表現では品質マネジメントシステムを確立することである。一方、規格の他の『品質計画』は、日々の実務において個々の特定の製品又は業務をどのように行うかを『品質マネジメントシステムの計画』で整えられた手順や資源を基礎として手はずを整えることである。
(3) 品質マネジメントシステムの計画の様々な性格
@ 品質マネジメント システムのプロセス
品質マネジメントシステムの計画活動も、規格では品質マネジメントシステムのプロセスのひとつである。計画活動の狙いの業務結果、つまり、計画プロセスの品質目標は、必要な顧客満足を確実に実現するための品質マネジメントの業務とその実行の手はずである。また、計画活動で整えた手はずは計画プロセスのアウトプットである。このアウトプットは、原文では"planned arrangement(計画された手はず)"であり、8.2.2 a)項に現れ、7.2.3項では"arrangement"として記述されている。どちらの場合もJIS和訳は、適切な日本語をあてていない。
A PDCA/プロセスアプローチ サイクルのP/計画
5.4項の標題は『計画(planning)』であり、これはPDCA/プロセスアプローチ サイクルのP/計画(planning)のことである。規格の品質マネジメントのPDCA/プロセスアプローチ サイクルは、『品質マネジメントシステムを確立し、文書化し、実施し、維持し、有効性を継続的に改善する』と表現される(4.1項)。ここでP/計画に相当するのは、『品質マネジメントシステムの確立』であり、『文書化』をも包含する。これはもう少し具体的には、品質マネジメントに必要な業務を特定し(4.1 a)項)、業務間の関係(同 b)項)と各業務の実行と管理の手順と目標を決め(同 c)項)、必要な資源と情報を利用できる状態にする(同 d)項)こととも表現できる。
PDCA/プロセスアプローチ サイクルのD/実施に相当するのは『品質マネジメントシステムを実施する』であるが、この『実施』は"implementation"であり、P/計画で整えられた手はずに則って業務を実行することであり、定められた手順を履行することを意味する。この履行を監視、測定及び分析(4.1 e)項)し、計画通りの結果が得られるように管理すること(4.1 f)項)が、C/管理であり、『品質マネジメントシステムを維持する』である。
B 品質目標を達成するための計画
規格は 品質マネジメント活動の方法論を、トップマネジメントが組織の品質目標を含む品質方針を定め(5.3項)、各業務の品質目標を各部門、階層で確立させ(5.4.1項)、これを達成することによって継続的改善を図る(8.5.
アイダホフォールズ検索の最適化1項)という別の表現のPDCAサイクルでも表している。この表現では、『品質マネジメントシステムの計画』とは、品質マネジメントシステムとその各プロセスの品質目標をどのように達成するのかを計画することであり、各品質目標達成のための手順を定め、資源を用意することである。規格作成者のひとり(21-c)が『品質マネジメントシステムの計画』を、設定された品質目標を達成するために必要な資源を特定し、準備することと説明しているのは、この観点に基づいたものである。
C 改善の計画
継続企業として事業の維持発展を図るためには、狙いの顧客満足の姿を事業環境の変化に対応して変更する必要がある。これは、組織の品質方針や品質目標の変更又は新設という形で明確にされ、その実現図るためにも組織の新しい品質目標は関連する業務の品質目標に展開される。この品質目標を達成する手はずを整える活動も品質マネジメントシステムの計画である。新しい品質目標が既存の手順、或いは、既存の技術や設備で達成できる場合は、品質マネジメントシステムの計画活動はそれらを品質マネジメントシステムの手順に組み入れることである。
しかし、品質目標の達成に手順の改善が必要であり、そのために実験や試行、試作を必要とする場合には、新しい手はずの確立を目的とした改善の活動が組織される。この場合の品質マネジメントシステムの計画は、改善活動計画の策定である。改善活動計画も一般に、実験や試行、試作の手順や資源から成るが、何をいつ試みるか、結果をいつどのように評価するかなどの日程計画が含まれる。この日程計画は規格では"programme"と表現され、JISは『監査プログラム』(8.2.2項)と和訳し、ISO14001では『環境マネジメントプログラム』(96年版)、『実施計画』(2004年版)と和訳している。
改善計画の下に実行される改善活動の結果に不確実性が高い場合には、その品質目標が達成されない可能性も考慮しなければならない。その品質目標の未達が直ちに組織の品質目標の顧客満足の達成に影響を及ぼすのなら、未達の場合にとるべき代替策を用意しておくか、又は、他の改善計画をも同時に進めることが必要である。通常このような品質目標は、その達成の方策の開発の工期を考慮して、実際に必要となる前に掲げて改善に着手する必要がある。このような品質目標は、必ず実現を図らなければならない品質目標ではなく、いわゆる改善の品質目標とはこの種の品質目標であり、これは規格では予防処置(8.5.3項)である。また、このような改善活動は実務では、製品開発活動、研究開発活動、設備導入活動などの形をとることが 多い。
2-2. 品質マネジメントシステムの有効性
(1) 品質マネジメントシステムの計画の妥当性
体系的で組織的な業務実行のためには、品質マネジメントシステムの計画で整える手はずが、組織の品質目標を間違いなく達成できるものとなっていなければならない。つまり、定められた手順の通りに、また、用意された資源を定められた通りに使用して業務が行なわれれば、必ずその業務の狙いの結果たる品質目標が達成でき、それぞれの業務の総合結果として組織の品質目標が達成されることとならなければならない。このように計画した手はずが狙いの業務結果を出すことに有効であるということを、規格では"valid"と表現している。"valid"は、有効であると考える根拠があるということであり、狙いの業務結果が確実に出ると考えてもよい根拠があるということである$46。
品質マネジメントシステムの計画活動の結果の整えられた手はずは、狙いの業務結果が確実に出るという観点で有効なものでなければならない。これは本項では「品質マネジメントシステムの計画活動が品質目標を満たすように行われる」と表現されている。計画された手はずが有効であることを確実にする管理には、種々の方法がある。規格では、計画結果は一般に文書化され、それら文書に基づいて業務が行なわれるから、この文書の発行に際する責任者による文書の内容が適当かどうかの評価と承認の規定(4.2.3 a)項)が、計画された手はずの有効性を確保する管理の基本である。製品実現業務の計画の活動の結果で有効な製品実現の手はずが整えられることを確実にするために、製品の設計開発の活動の手はずを準用して計画活動を管理することが推奨されている(7.1項 注記2)。
また、規格では"valid"であることを客観的証拠で実証することを"validation"と呼ぶ。JISはこれを『妥当性の確認』と和訳しているが、規格の意図は特定の業務に関して、計画結果の有効性を試験や試作その他の方法で得た客観的証拠によって明らかにすることである。「有効性の実証」の意味であるが、JIS和訳に近い表現では「妥当性の明確化」である$46-1(7.5.
affilateプログラムは何ですか2項)。
(2) 品質マネジメントシステムの有効性
規格では『有効性』を、「活動が計画された通りに行なわれ、狙いの結果が得られた程度」と定義している#4。この有効性は、原文では"effectiveness"である#25。品質マネジメントシステムの有効性という場合は、整えられた手はずに則って業務が行なわれる程度を指す。計画した手はずに則って、狙いの結果が得られるように業務を行なうことは、JIS和訳では『効果的に実施する』であるが、原文は"be effectively implemented"であるから「効果的に履行する」である。
『品質マネジメントシステムの有効性』という場合は、品質マネジメントシステムという一連の業務の実行の有効性であり、手はずに則って効果的に各業務が行なわれ、狙いの業務結果が確実に出され、その総合的結果として狙いの顧客満足が実現しているかどうかである。すなわち、業務実行には人の行動や設備の作動上の誤りや統計学的変動など様々な不確定要素がつきものであるから、業務実行が計画の手はずを逸脱することもあり得る。狙いの結果を確実に得る体系的で組織的な業務実行には、有効な手はずを整えることと共に、この手はずに則って業務が行なわれるかどうかを監視し、逸脱があればそれを正す管理の活動が伴わなければならない。これはPDCA/プロセスアプローチ サイクルでは、C/管理であり、8章にはこの管理活動と要件が規定されている。
問題を正す処置は、品質マネジメントシステムの変更であり、これによってより逸脱の可能性の小さい手はずとなり、或いは、狙いの結果の実現の可能性が高まる。この繰り返しが、『品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善する』である。この継続的な改善により、必要として定めた業務結果が確実に出されるような業務能力が向上、強化される。顧客の必要と期待は時代と共に変化し、一般に高度で厳しく、実現困難性は増す。それでも組織はいつの時代においても、必要として決めた顧客満足を確実に実現することができ、以てその事業を維持発展させることができる。
3.規格要求事項の真意
継続組織として維持発展を目指す組織は、必要な顧客満足の確実な実現を図る効果的な品質マネジメントを行なうことが必要である。この根本は多くの人々が効果的に協働して、品質マネジメントの業務を体系的、組織的に行なうことであり、それは人々が必要な業務結果を出すことの出来るよう整えられた手はずの下でそれぞれの業務を行なう状況を指す。組織は品質マネジメントのすべての業務について、必要な業務結果を明確にし、それを実現する手順を確立し、必要な資源を用意しなければならない。各業務に必要な業務結果は、組織の品質目標たる品質マネジメントシステムの品質目標からプロセスの品質目標として各業務に展開されたものである。各業務の品質目標を決定し、この達成の手はずを整える活動は、規� ��では『品質マネジメントシステムの計画』と呼ぶ。
組織の品質目標が変更され、又は、新たに設定された場合は、これを効果的、効率的に達成する手はずをあらためて整えなければならない。また、組織の品質目標の達成に特定業務の品質目標が不十分であることが判明した場合、或いは、特定の業務の手はずがその品質目標の確実な達成に不十分であることが判明した場合は、品質目標を見直し、又、手はずを見直さなければならない。更に、プロジェクト型事業で新規受注があり、或いは、市場型事業で新製品を投入し、又は、組織が新技術を導入し、設備を更新、新設する場合も、組織の品質目標の変更の要否や有無によらず、新しい業務、新しい業務方法が必要となり、又は、業務実行の狙いを変更する必要が生じる。これらは、整えられた手はずの変更であり、品質マネジ� ��ントシステムを変更することに相当する。そして、このために業務実行の手はずを見直し、整える活動も品質マネジメントシステムの計画である。
品質マネジメントシステムの計画により業務実行の手はずを整えるとは、業務の実行と管理の手順を確立し、それに必要な資源を用意することである。実務的には一般に、業務の方法や基準を決め、要員の手配や教育訓練を行い、設備の改造や新設をし、文書を改定し又は新たに発行し、情報と伝達経路を変更又は追加したりする形をとる。また、新たな品質目標が組織の能力に余るものであれば、手順や資源の改善が必要であり、品質マネジメントシステムの計画活動では改善の目標を決め、試験や試行の手順を決め、資源を用意し、また、その実行の日程計画を策定するになることもある。
規格は、7.1項(製品実現の計画)、7.3.1項(設計及び開発の計画)、7.5.1項(製品及びサービス提供の計画)、8.1項(監視、測定、分析及び改善のプロセスの計画)、8.2.2項(内部監査の計画)で、それぞれの計画活動に固有の要件を規定している。しかし、これらの計画活動も品質マネジメントシステムの計画の一部であるから、その計画活動は本項の品質マネジメントシステムの計画に関する要件をも満たして行なわれなければならない。
(1) トップマネジメントは、次の事項を確実にしなければならない。
組織は、品質マネジメントシステムの計画を行なう手はずを確立し、手はずに則って品質マネジメントシステムの計画を行なわなければならない。この手はずでは、トップマネジメントの必要な管理を明確にしておかなければならない。
品質マネジメントシステムの業務実行の手はずが、組織の狙いの顧客満足を確実に実現する効果的なものであるためには、それら手はずは次のa),b)項を満たしていなければならない。トップマネジメントには、組織の事業の維持発展に必要と考える顧客満足を実現させる必要と責任がある。これを実現し責任を果たすためには、トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの計画活動の実行をも管理することが必要である。その効果的な管理とは、品質マネジメントシステムの計画活動が、次のa),b)項の要件を満たして行なわれるように管理することである。
この管理は、規格ではプロセスの監視及び測定(8.2.3項)の一種であり、内部コミュニケーション(5.5.3項)や マネジメントレビュー(5.6項)、文書管理(4.2.3 a),b)項)も手段となり、管理責任者の責任及び権限(5.5.2項)に関係させることもできる。当然、トップマネジメントがすべての業務について個々に管理することはできないから、品質目標と同じく部門及び階層に個別の管理責任を委ね、部門長の業務実行を管理する形がとられるのが一般的であろう。トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの計画活動に関する手順が確立し、部門や部門長の責任権限が明確にされていることを確実にした上で、必要なら重要な手順書や改善活動計画書、手順変更の実行計画書を評価、承認する、重要な計画活動を特定の方法で報告させるなどの手順を確立し、更に、日常的な業務実行の統括(8.2項)の一環として、a),b)項を確実にしなければならない。特に重要な品質マネジメントシステムの計� ��については、マネジメントレビューの対象ともしなければならない(5.6.2 f)項)。
(2) 品質目標に加えて4.1に規定する要求事項を満たすために、品質マネジメントシステムの計画を策定する。[ a]項]
08年版の『品質目標に加えて4.1に規定する要求事項』は00年版の『品質目標及び4.1に規定する要求事項』から原文により忠実な和訳に変更されたが、『〜を満たすために』と『計画を策定する』は英文解釈と用語理解を誤った和訳のままである。条文の正しい和訳は「トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの計画活動が品質目標だけでなく、4.1に規定される要求事項をも満たすように行なわれることを、確実にしなければならない」である$29。
@ 品質マネジメントシステムの計画を策定する
『計画を策定する』の原文は「計画活動が行なわれる」であり、手はずを整えること、あもう少し具体的には手順を確立し必要な資源を用意することである。組織の品質目標が変更されたり、業務実行方法を変更するなど、必要が生じた場合には、品質マネジメントシステムの該当する業務の手はずを変更し、又は、新たに整えなければならない。これは一般には、業務方法の変更や新設、要員の手配や教育訓練、設備の改造や新設、文書の改定や新たな発行、改善活動計画の見直し、変更などの処置の形をとる。
A 品質目標を満たすために
『〜を満たすために』の原文の意図は「〜を満たすように」である。すなわち、条文は「品質マネジメントシステムの計画活動が品質目標を満たすように行なわれる」である。品質マネジメントシステムの計画によって確立され、又は、変更される業務実行の手はずは、必要な業務結果を確実に出すことができるようなものでなければならない。この必要な業務結果とは、その業務の実行の狙いであり、規格ではその業務の品質目標である。
トップマネジメントは、組織の品質方針、品質目標を決め(5.3項)、それが各業務の品質目標として正しく展開されるよう管理する(5.4.1項)だけでなく、その品質目標が確実に達成されるように手はずが整えられることをも管理しなければならない。
B 4.1に規定する要求事項を満たすために
『〜に加えて〜を』より『〜だけでなく〜も』の方が原文の意図をよりよく反映した日本語であり、『〜を満たすために』は間違いで「〜も満たすように」でなければならない。
どの業務も実行により狙いの業務結果が確実に出るようにするためには、業務実行の手順と資源だけでなく、その業務実行を監視し、狙いの業務結果を常に確実に出すことのできるように問題を検出し、改善するための手順と資源が含まれていなければならない。すなわち、実行の手順が狙いの業務結果を出すのに有効で十分であるとしても、手順が効果的に履行されるとは限らないから、必ず所定の業務結果が得られる保証にはならない。業務の実行に、その狙いの業務結果が確実に得られるようにする実行管理の業務が伴わなければならない。
これを規格はプロセスアプロ-チと称し、計画−履行−管理−継続的改善のPDCAサイクルと同趣旨の業務実行サイクルに模して実務的に、しかし、汎用的表現で、4.1 a)〜f)項として示している。『4.
しかし、ある業務の実行の手はず、例えば手順を、関係するPDCA/プロセスアプローチ サイクルの一連のすべての手順を含めてひとつの手順とし、又は、ひとつの手順書に記述することは必ずしも必要ではない。多くの場合は、実行の手はずが当該業務に固有であっても、実行管理の手はずは他の多くの業務と共通である。規格でもこの実態を念頭において、各条項でそれぞれの業務の実行上の要件を中心に規定し、8章でそれら業務に共通の実行管理の業務に関する要件を規定している。
トップマネジメントは、各業務の品質目標が確実に達成されるように手はずが整えられることをも管理しなければならない。この手はずが真に効果的であり、組織のすべての業務が定められた手はずに則って体系的で組織的に実行され、狙いの顧客満足が確実に達成できるよう、各業務をどのように実行管理するかの手はずも整えられていることも管理することが必要である。
(3) 品質マネジメントシステムの変更を計画し、実施する場合には、品質マネジメントシステムが"完全に整っている状態"に
維持する。 [ b)項]
原文では「品質マネジメントシステムの変更の手はず整えられ、その手はずに則って変更が実行される場合も、品質マネジメントシステムとしての一体性が維持される」である$30。すなわち、前半部分は、品質マネジメントの業務の手順や資源が変更され、それをどのように実施に移すかの手はずが整えられ、その手はずが実行に移される場合は、という意味である。後半部分は、手順や資源が変更される業務が、狙いの顧客満足の実現を図るという点で他の業務と適切に関係し合っている、という意味である。
本条文の趣旨は、手順や資源の変更の手はずが適切に、混乱なく実行されて、変更に伴う問題により狙いの顧客満足の実現に支障を生じることのないように、変更を管理しなければならないということである。実務的には例えば、製品の仕様や出来栄え、或いは、品質マネジメントの業務の手順ないし資源を変更する場合には、新旧の切り替えの過渡期或いは切り替えの後においても、それぞれ意図する所定の製品が得られるように、新旧切り替えを管理することである、
製品実現のある工程のある設備を新式に更新する場合を例にとると、生産の新設備への切り替えは、新設備の使用方法、操業基準を確立し、手順書を改訂し、必要な教育訓練済みの要員を配置してから行なわなければならない。このことにより、同じ製品を得るために素材や前後の工程の操業条件を変える必要がある場合もあるから、こちらの手順や資源も変えなければならない。購入部品を変更する場合には、新旧切り替えに合わせた発注が必要である。更に、新旧切り替えの過渡期においては、後工程では、受取る半製品が新旧のどちらの設備を適用されたかによって、適用する操業条件を変える必要がある。旧設備用に前工程を終えた半製品在庫がなくなるまでは、旧設備は残さなければならない。これらのいずれかに不備がある状� ��が、品質マネジメントシステムの一体性に欠ける状態であり、狙いの顧客満足の実現に支障が生じる可能性がある。
この管理は品質マネジメントシステムの変更管理とも呼ばれ、規格では、これに備える文書の管理方法(4.2.3 b),c),d)項)、これに関係する要員の職務遂行力の管理方法(6.2.2 a)〜c)項)、変更管理のひとつの態様としての設計開発活動における体系的評価(7.3.4項)が規定されている。
変更管理の最も簡単な態様は、文書の適用対象や有効期限或いは適用開始時期の明示、変更連絡文書の伝達や関係する定例会議での確認である。また、変更の複雑さや規模に応じて、特別な会議を設けての徹底や調整、変更のための特別チームの設立などの方式がとられる。齟齬があれば品質方針や品質目標の顧客満足に深刻な影響が及ぶ可能性のある、重要な或いは大規模な製品や設備、業務方法の変更を行なう場合は、日程計画の下に関係者の必要な取組みを調整し、統括する方式がとられる。更に、万全を期すために規格は、この品質マネジメントシステムの変更の管理をマネジメントレビューでの検討事項として取上げる必要を規定している(5.6.2 f)項)。
トップマネジメントは、これら変更活動を管理しなければならない。その管理の態様と程度には、変更管理の手順の確 トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの変更の混乱で狙いの顧客満足の実現に支障を来すことのないように、変更を管理しなければならない。その管理の態様と程度には、変更管理の手順の確立と日常的な業務実行の統括の一環として管理することから、マネジメントレビュー(5.6項)で直接的に管理することまである。
a)項, b)項共に原文では、変更活動に関しては「〜される」と受動態で書かれ、トップマネジメントがそのこと「確実にする」と能動態で書かれている。この表現は、変更活動を行なうのはそれぞれの業務に責任を持つ管理者であり、これをトップマネジメントが管理するという本条項の趣旨を表すのに適切である。なお、00年版JIS和訳ではa)項のみが能動態表現で、08年版でb)項も能動態表現となったが、原文は不変であるから、この趣旨は変わっていない。
(註釈) $:英語解釈 #:定義 ( ): 文献 ・・・全編完成後にまとめて掲載予定
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